コメント

これまで作品でご一緒したみなさんにコメントをいただきました。


神里雄大(演出家・岡崎藝術座)

――永山さんはくしゃっとした笑顔の下に恐ろしく冷静で冷淡な怪物を隠しているようにわたしには思えるので永山さんと話すときは底の見えないところにいるそいつに飲み込まれてしまうのではないかと冷や汗をかいてしまう、永山さんの書く言葉はそんな居心地の悪い迫力があって緊張感がある。

  永山智行(作)×神里雄大(演出) 「昏睡」(青年団若手自主企画・2009)

中島諒人(演出家・鳥の劇場芸術監督)

――柔和な表情の下に徹底的に弱者からの視線がある。その視線の定め方が強い。戦う強さではない。「いる」ではなく、「ありつづける」ことを肯定し、いろんなものが共に生きられることを願う。激しい無抵抗。劇作においても劇団活動においても貫いている。

   永山智行(作)×中島諒人(演出) 「古事記は歌ふ」(鳥の劇場・2014)

三浦基(演出家・地点)

――演出家にとって、作家は死んでもらっている方がよい。著作権が切れていれば申し分ない。書かれたものは書かれた瞬間から死んでいる。演劇は死んだ文字の復活祭だ。そんな場に生きた作家にいられたらちょっと困る。ところが永山智行という人は、そう思わせない貴重な作家だ。彼が台本化した太宰治の『お伽草紙/戯曲』を演出したときは、ずっとそばにいて欲しい存在だった。まず彼はあまりしゃべらない。だいたいは寡黙にニコニコしている。「忘却は、人間の救いである」という太宰の名言に、ふと「どうして人は忘れるんでしょうね……」と口にしたかと思えばまた黙る。彼の沈黙は、決して思わせぶりじゃない。何かを思い出そうとしている真面目な時間だ。この男は、家庭を持ち子供が寝静まったら書くという。朝方まで何を思い出そうとしているのか。そんな真面目な彼の劇団が25周年を迎えるという。「年月は、人間の救いである」とも太宰は言っているのだが、永山が思い出せずにいることが、まだ続くのかと思うと不気味でしょうがない。おめでとう。

   永山智行(作)×三浦基(演出) 「お伽草紙/戯曲」(劇団うりんこ・2010) 「Kappa/或小説」(地点・2011)

井之上隆志(俳優・元カクスコ)

――大きく云う訳ではない。あべゆうは宮崎、否九州演劇のクォリティーを高めているキーパーソンの一人である。僕はこの判断に絶対の自信を持っている。この人は見ておいた方がいい。損はしない。

    あべゆう(女優)×井之上隆志(俳優) 「エキスポ」(宮崎県演劇協会・2006) 「波の上の青い島」(宮崎県演劇協会・2014)

小田晃生(ミュージシャン)

――ミュージシャンとしての千春さんと共演させていただきました。明るくて、ぱりっとした声!うらやましい… 一緒に声を合わせて歌うのが気持ちよかったです。今度は女優さんの千春さん、楽しみにしております。

    かみもと千春(ミュージシャン)×小田晃生(ミュージシャン) 「ふたりで歌いまショー」(チャルネイロ・2014)

日髙啓介(俳優・FUKAIPRODUCE羽衣)

――飄々とした存在感と、なんともつかみどころのない水のような声。男前のくせに力の抜けた顔。しかし、一見曖昧にみえる彼の特徴のどれもが曖昧ではなく、確固たる信念を持って成り立っている。濵砂崇浩をはじめて舞台で目撃したとき、そのつかめない存在感にすっかりとりつかれ、終演後ロビーでぼーっとしている彼を捕まえ話しかけた。「あへー」としか答えず聞いているのかいないのか分からない表情の彼をまぶたが記憶して以来、俺は濱砂崇浩の無意識の策略にまんまとはまり、そしてこれからもはまり続けるのである。

    濵砂崇浩(俳優)×日髙啓介(俳優) 「ゴドーを待ちながら」(宮崎県立芸術劇場・2015)

田辺剛(劇作家・演出家・下鴨車窓)

――濵砂さんとはずいぶん前から面識はあったけれど(初めて会ったのは2008年のこふく劇場の京都公演を観た時だ)、わたしが2014年に「リーディングナウ」という企画で演出を担当して宮崎に滞在しながら舞台作品を作ることになって、そのオーディションを彼が受けに来たのには驚いた。なかなかあのくらいの年になるとプライドが邪魔してオーディションを受けようなんて気にならない。いやけどそのおかげで彼と創作現場をともにできたのは幸いだった。演出家が変われば求められる演技の方法も変わる。それに柔軟に対応してなおかつ自分の表現も成立させられるかが「素敵な」俳優の条件の一つだとわたしは思っている。そんな俳優はすぐに福岡や東京に行っちゃうけど、いるところにはちゃんといるんだと改めて思わせてくれたのが彼です。これからも宮崎と京都、お互い頑張りましょうね。

    濵砂崇浩(俳優)×田辺剛(演出) 「マッチ売りの少女たち」(宮崎県立芸術劇場・2014)